「慢性的な頭痛に悩まされている…」

「日常的に身体がだるい…」

「目がチカチカしたり吐き気がする…」

こんな症状に悩まされていませんか? ひょっとすると、それは「シックハウス症候群」かもしれません。

住宅室内の空気汚染を原因とするシックハウス症候群。マンションや一戸建てに限らず、対策を怠ることで、誰にでも発症するリスクがあるのです。

室内の空気汚染の主な成分は、人体に悪影響を及ぼす有害化学物質です。これらは身体が小さいお子様への影響が特に大きく、同様な症状の他、アトピー、アレルギー、そしてぜん息といった症状の原因ともなります。


シックハウス症候群については、先ずは正しい知識を備える事が大切。長年、健康住宅を建ててきた木造住宅のプロが、分かりやすく解説いたします。

天然素材リフォームのマンション。漆喰と無垢材を使う

1. シックハウス症候群とは?

シックハウス症候群は、医学的に確立した単一の疾病というよりも、「住宅由来の健康障害」の総称です。

1980年代の欧米で、オフィスビルで働く大勢の人が、体調不良を同時に訴える事態が多発しました。その原因が、オフィスの換気不足で室内の空気が汚染されたことであると指摘され「シックビル症候群」という名称で社会問題化しました。

シックハウス症候群は、このシックビル症候群から転じた和製英語なのです。

2. シックハウス症候群の主な症状。

シックハウス症候群として、様々な健康障害が指摘されています。以下一つ一つ確認していきましょう。

2-1. 目、のど、鼻などの刺激症状

分かりやすいのが、目がチカチカして涙目になる症状です。私の場合、ショッピングモールで、家具のフロアに来た瞬間目がチカチカすることがあります。合板から揮発する化学物質がその原因です。

別のフロアに移るとすぐに治まりますが、住まいで常に有害物質を吸い込むことを想像すると、怖いなと思います。咳が止まらないという症状も該当します。

有害な化学物質を吸い込むことで、のどが乾燥し咳が止まらなくなるのです。のどの粘膜に微量の化学物質が付着し続ける事で、潤いが失われるのです。

呼吸の入り口である鼻の粘膜も当然刺激されますので、鼻水が止まらないという症状の報告も多いですね。

2-2. 全身倦怠感、めまい、頭痛・頭重などの不定愁訴

また、シックハウス症候群に多いのが、身体がだるい、めまいや吐き気がする、頭が重い、イライラするなどの、「何となく体調が悪い」という状態である不定愁訴(ふていしゅうそ)です。

こういった自覚症状の原因が、住宅の空気汚染であると気付くのは、知識が無ければほぼ不可能です。だから、対応策がわからないまま、体調が悪い状態が毎日続いてしまうという事態になってしまうのです。

2-3. 皮膚の異常

シックハウス症候群として見なされる症状には、皮膚の異常もあります。痒みが止まらない、湿疹が治まらない、じんましんが出るといった症状が、住宅の汚染物質の影響である可能性もあります。

3. シックハウス症候群は「揮発性有機化合物」と「住宅の高気密化」が主な原因。

シックハウス症候群には、様々な症状があることをご説明しました。それでは、その原因とは果たして何なのでしょうか。以下順を追ってご説明します。

3-1. 人体に有害な建材や家具から放出される「揮発性有機化合物(VOC)」

まず一つ目の原因としてあげられるのは、揮発性有機化合物(VOC)です。

現代の建築物には、様々な建材が使われています。住宅についても同様で、昔の家で使われていた素材(天然木、土、和紙、竹など)以外の工業製品としての建材が、今ではメインに使われています。これらの建材をまとめて、「新建材」と呼びます。

合板の床材。これも新建材です。


ビニルクロス、合板、集成材などの工業製品は、全て「新建材」に分類されます。そしてこれら新建材を構成する接着剤やプラスチックなどには、トルエン、キシレンなど様々な石油由来の有機化合物が使用されています。

新建材に使用される有機化合物の中には、常温で気化する化合物も多く含まれています。これらを、揮発性有機化合物(VOC)と言います。

VOCは常温で気化するため、新建材を使った住宅では、新建材が放出するVOCが室内に放散されます。時間の経過とともに放散されるVOCは減って行きますので、築数十年経った中古住宅では、VOCはほとんど放出されることはありません。

一方で、新築直後は、新建材からVOCがどんどん放出されている時期ですので、空気の汚染濃度がとても高い状態なんです。新築マンションや新築住宅に住み始めたとたん、目がチカチカしたり、身体がだるくなったというのは、このような背景があるんですね。

3-2. 住宅の高気密化

そして二つ目は、「住宅の高気密化」です。


昔の家は、隙間風が入るような粗末な作りでした。気密性など全く確保されておらず、冬は寒さをこらえて過ごしていました。

豊かな時代となり、住宅技術が進歩して、住宅に冬の温かさが求められ始めました。その性能を高める事に邁進した結果、魔法瓶の様に、すっぽりと住宅を外気から覆ってしまうような家づくりが普及しました。これが高気密・高断熱住宅です。

住宅と同じくマンションでも、高気密仕様が主流となりました。しかし一方で、高気密となれば室内の空気が外気と入れ替わることが無くなります。そこで、問題となったのが室内の空気汚染を原因とする、シックハウス症候群なのです。

新築直後のマンションの室内には、ビニルクロスや合板が揮発するVOCが、どんどん放出されます。気密が高いからそれらが室内に充満し、濃度が上がり続ける。そしてシックハウス症候群を発症する。


このようなプロセスで発症する方が続出し、社会問題化した結果、「24時間換気システムの設置を義務付ける」という法律が施行されました。これは「空気汚染が深刻だから換気設備を付けて稼働しなさい」という、住み手に義務を課す決まりとも言えます。何とも理解に苦しむものです。

このような規則が整備されている一方で、フィルターの清掃まで意識が回らなかったり、音がうるさいので換気システムを切っていたりというご家庭が過半数を占めているという報告もあります。そこには、室内空気の鮮度を保つという本来の目的を果たせられていないとの指摘があります。

3-3. カビやダニも原因の一つ

シックハウス症候群は、住宅由来の一連の疾患ですから、住宅で発生するカビやダニが原因の疾患も含まれます。ぜん息やアレルギー、アトピーなどの原因が、カビやダニであるとも指摘されています。こまめな掃除や湿気対策を、怠らないことをお奨めします。

3-4. 家具

住宅そのもの以外で、しっかりと対策をしておきたいのが家具です。特に収納家具の合板には大量の接着剤が使われています。

日本では、揮発性有機化合物(VOC)の濃度がガイドラインで厳しく規制されています。その一方で、中国を初めとする海外から輸入される家具には、VOCを大量に含んだ接着剤や塗料が使われていることが多いため、人体に悪影響を及ぼすリスクが非常に高いです。

最近では通信販売を中心に、安い家具が販売されていますが、このような背景をご理解の上ご購入されることを強くお奨めします。

当然、国産の家具にもVOCは使われています。特にご購入直後の頃は、できるだけ換気をして、室内の空気中に有害物質を残さない様にご注意ください。

4. 今からできるシックハウス症候群の対策方法4つ。

ここからはシックハウス症候群予防の具体策4点を、ご説明します。

1)換気システムを常時つけておく

2)積極的に窓を開ける

3)湿気やすい場所はこまめに掃除をする

4)新しい家具は、引き出しなどを解放し有害物質を減らす

4-1. 換気システムを常時つけておく

新築の場合、新建材からVOCがどんどん揮発されています。換気をしていない状態が続くと、室内のVOC濃度が上がり危険ですので、常時換気システムを止めないようにしましょう。

4-2. 積極的に窓を開ける

また、天気の良い日には窓を開け、屋外の新鮮な空気を積極的に取り入れましょう。カビやダニの対策にも有効です。

4-3. 湿気やすい場所はこまめに掃除をする

また、湿気の多い季節は特に、湿気やすい場所(キッチン、洗面所、トイレの隅、押入れの中など)の掃除や換気をまめにしておきましょう。

4-4. 新しい家具は、引き出しなどを解放し有害物質を減らす

新しい家具からもVOCが揮発されています。扉やひきだしを、時々、全解放してあげると、有害物質が減るスピードが早まりますので、これもお奨めです。

5. 住宅には、有害物質は確実に使用されています。

建築基準法で、有害物質の使用についての規制がなされていますので、以前に比べて大分、建材は安全にはなっていると言われています。しかし実際は、「規制対象外の有害物質」を使用して新建材を開発しているのが実情です。

従いまして、新建材には有害な物質が必ず含まれていると、まずはご理解下さい。シンナーの様な臭いがするのが特徴ですが、最近は、臭いがしないVOCも様々に使われていますので、危険を察知できず、対策が怠りがちになります。

大人に比べて、子供の方がより影響を受けやすいのは事実ですので、お子様のためにも、材料をしっかりと吟味して、住まいを計画されることを強くお勧めします。

6. 新しいお住まいを検討する際にできる対策は?

それでは、新しいお住まいをご検討される際に、お奨めしたい対策方法をお伝えします。

6-1. 住宅の空気を、実際に体験してみましょう。

新築を考える前の不安を解消する方法の一つ目は、実際に住宅を体験する事です。住宅会社ではモデルハウスを公開していたり、実際に住む人の完成住宅を期間限定でオープンにしていたりと、住宅を体験する機会を設けています。

特に、完成住宅の見学会は、VOCが最も多い状態の新築住宅を体験できますので、安全性を確かめるためのチャンスです。その時に、嫌な臭いがしたり、息苦しさを感じたりすれば、危険信号。更には、目がチカチカしたり、暫くして頭痛がするようでしたら、直ぐに退出された方がいいでしょう。

6-2. 空気環境の安全性について質問してみましょう。

住宅会社の担当者に、室内の空気環境の安全対策をどのように考えているかを質問してみましょう。具体的な回答が無ければ、会社として無関心と言えるでしょう。

「法律に則っています」とか「常時換気システムを24時間稼働していただけると安心です」という程度の回答でしたら、シックハウス症候群の発症には、個人差があるという事実を知らない、つまり、会社として重要視していないと見なしていいでしょう。

「シックハウス症候群は社会問題化されていることもあり、お客様のご要望に従い、できるだけ安全な建材を使用する体制は整えています。」という回答であれば、意識の高い会社であり、信頼に値すると評価していいでしょう。

6-3. 自然素材だから安心という訳ではありません。

自然素材の家だから安心という訳ではありません。

例えば、珪藻土には必ず接着剤が含まれています(接着剤が無いと固着しません)。無垢材の床でも、表面にウレタン塗装が施されていたり、有機溶剤が浸透していたりと、VOCが含まれている製品はたくさんあります。

塗装も何もしていない無垢材の床材であっても、施工の際に接着剤を使いますので、その安全性は確認した方がいいでしょう。

新建材ばかりの家に比べて危険性は低いですが、自然素材の家だから100%安全であるという訳ではないことはご承知ください。

7.無添加住宅はシックハウス症候群の心配はゼロ。

私たち(株)アイ.創建が、神奈川全域で手掛けている無添加住宅は、人体に安全な材料を厳選しているため、シックハウス症候群の心配は一切ありません。住宅業界初の「シックハウス保証」をつけた実績がある通り、自信を持って、長く健康に住めるお住まいを提供することができます。


無添加住宅の普及のため全国を飛び回る、株式会社無添加住宅の中上均さんのお言葉。

実は、自分自身も元々シックハウスの症状が強かったんですね。。(略)。。自分自身の体感として、本当に違うと断言できますね。無添加住宅に携わるようになって体の調子、肌の調子が変わりました。シックハウス症候群はそうでは無い方から見ればよく分からないかもしれませんが、この症状は本当に辛いものなんです。自分の実体験があるからこそ、心からお客様へ奨める事が出来ます。

横浜中川無添加住宅/中上さんインタビューより抜粋。

横浜市都筑区の住宅総合展示場「ハウスクエア横浜」にある、無添加住宅展示場にて、実際の建物のほかに、安全な建材のラインナップをご覧いただけますので、是非ともお越しください。

8. まとめ

1)長年悩まされている方がとても多いシックハウス症候群対策は、先ずはその原因を知り、正しい知識を持つことが大切。

2)建材からは有害物質が放出されているので、日々換気を怠らず、常に新鮮な外気を取り入れましょう。

3)新築をご検討の際には、住宅を体験し空気環境の安全性を確かめましょう。

今回は、住宅由来の疾患であるシックハウス症候群に関する全般的な内容についてまとめました。これには様々な症状があり、直ぐに原因に気付きにくいため、長年悩まされている方がとても多いのが実情です。

また、小さなお子様ほど耐性が低いため、発症しやすくなります。新建材に使われている化学物質が、建築基準法に準拠しているから安心であるとは限りません。新しいお住まいを計画する際には、この点をご理解いただいた上で、具体的な個々の対応策を講じることをお奨めします。


■参考リンク

先に登場した、国内最高水準の健康住宅である無添加住宅の普及に邁進されていらっしゃる、株式会社無添加住宅の中上均さんへのインタビュー記事もご覧下さい。空気汚染の人体への影響や安全な建材などについて、深くご理解いただけると思います。

「健康住宅への飽くなき探求」(横浜中川無添加展示場ウェブサイト)

■内部リンク

シックハウス対策としての国の規制や実際の住まいの空気汚染についてまとめた記事は、こちらをご覧下さい。

シックハウス症候群の原因である室内空気汚染。国の対策はどうなっているの?



シックハウス症候群が悪化して罹る「化学物質過敏症」。その内容や患者さんたちの声をこちらにまとめました。

化学物質過敏症とは?症状と原因。シックハウス症候群との違いも。