神奈川県・(株)アイ.創建

鳥インフルエンザ対策として、養鶏場で消石灰を散布するニュース映像をご覧になった方も多いと思います。


この消石灰に、ふのりやスサを混ぜたものが、左官材料である漆喰です。ただし、建材としての漆喰商品は様々。各製造メーカーで混入成分は異なります。そして、消石灰(水酸化カルシウム)は、空気中の二酸化炭素とゆっくりと反応し炭酸カルシウムに変化します。従いまして厳密に言えば、消石灰の性能=漆喰の性能ではないという事実を、先ずはご承知下さい。

2020/5/20追記

また、新型コロナウイルスと遺伝子情報が90%一致するヒト・コロナウイルス(HCoV-229E)をこのオリジナル漆喰に付着させたところ、5分後に完全に死滅(不活性化)しました。詳しくは本文をご覧下さい。

1.漆喰の成分、消石灰がウイルスを退治する理由 -PH値。


そもそもウイルスって何者なんでしょうか? その疑問に答えるために、ここで簡単な解説を添えておきます。


ウイルスとは?
電子顕微鏡でしか見る事の出来ないナノ・レベルのとても小さな危険物質。生物学上は生物ではないとされています(ですから単細胞生物である細菌とは別の存在です)。生物とは異なる存在であるウイルスは、遺伝子情報(核酸)とタンパク質で構成されているのが基本です。


では、なぜ消石灰がウイルス退治に有効なのでしょうか?その答えは、PH(ペーハー)にあります。


PH(ペーハー)とは?

PHとは、その液体が酸性なのかアルカリ性なのかを表す尺度です。0から14の間の数値で表されます。0が強酸、中央値の7が中性、最大値の14が強アルカリです。



例えば、せっけん水はPH9あたりのアルカリ性、胃液は、PH1付近の強酸であると示されています(出典はこちら

ウイルスの話に戻ります。ウイルスは生存できる範囲のPH値というものが各々で決まっています。つまり強アルカリや強酸の水溶液に触れると死滅します。消毒液が正にこれですね。ただし、ウイルスごとに生存可能なPH域があります。

鳥インフルエンザウイルスであれば、PH3-PH11の間。
豚サーコウイルスであれば、PH5-PH12.5の間。


など、ばらつきがある様です。ただしウイルスを水溶液に浸した時間などにも影響を受けるでしょうから、研究の結果には差が生じていると考えられます(参考 ウイルス存在域参考資料)。

消石灰がなぜウイルスの退治に有効なのか。それは水溶液がアルカリ性になるからです(図の中の石灰水が、消石灰の水溶液です)。

アルカリ性の水溶液は、脂質を分解します(専門的には「鹼化」と言います)。そしてタンパク質をも分解します(専門的には「変性」と言います。たんぱく質を構成するアミノ酸の結合を分解したり結合を緩めて構造を変化させます)。


つまりシンプルに言えば、アルカリ性の消石灰が、ウイルスを構成する脂質とタンパク質を分解してウイルスを退治するのです。ただしアルカリ性といってもPH値でその強弱に差があり、ウイルスそれぞれで、アルカリに抵抗できるレベルは様々です。

石鹼で時間をかけてしっかりと手を洗いましょう。という声掛けからも、ウイルスのしぶとさが分かりますね。


2.エンベロープウイルスを退治する強アルカリ。


では、そのウイルスの構造をもう少し詳しく見てみましょう(Wikipedia)。



先ほどご説明したとおり、ウイルスの基本構造は、①のカプシドと呼ばれるたんぱく質の殻と、②のウイルス核酸です。

さらに、ウイルスの種類により、エンベロープというウイルス粒子の最も外側にある膜状の構造を持ちます(図の⑥)。エンベロープはその大部分が脂質でできているため、アルカリ水溶液で容易に破壊できるのです(そして、ウイルス感染に重要な役割を果たす「⑦スパイクタンパク質」をも破壊しますが、詳細はこちらをご参考下さい)。


ただし、様々なウイルスの中にはこのエンベロープを持たないウイルスもあり、例えばノロウイルスなどがそれに該当します。アルカリ水溶液が有効なエンベロープウイルスには、以下が該当します。

インフルエンザウイルス
新型コロナウイルス
B型/C型肝炎ウイルス
エイズウイルス
など。


ただしアルカリ性がどれくらいのレベルであれば効果があるのかという点には注意したいところ。先ほど例示したような、ウイルスの生存域のPHを超える必要があります。


粉状の漆喰に水を加えた時、つまり水酸化カルシウムが主成分の水溶液のPHは12.4(ただし飽和水溶液)。漆喰を施工してからは、空気中の二酸化炭素と反応し、次第に炭酸カルシウムに変化します。つまり、PH12.4の強アルカリから弱アルカリへと、つまり、炭酸カルシウム水溶液のPH9.8(JIS K 5101常温法による)あたりの数値へと変化すると考えられます。


上の図は、石灰岩を原料とする漆喰の製造工程を示していますが、漆喰壁が最初は水酸化カルシウムであるのが、やがて炭酸カルシウム(つまり石灰岩)へと時間をかけて変化することを示しています(出典はこちら



漆喰の壁がウイルス撃退に有効であるかどうかは、ウイルスが壁に付着したときのPH値と、付着してからの時間次第であると考えられます。くしゃみやせきなどの飛沫には唾液(水分)が含まれますので、その水分で消石灰がアルカリ水溶液(石灰水)になると考えられます(その効果については、以下に示した無添加漆喰の実験結果をご参考下さい)。


冬場の乾燥時期はウイルスが活性化するため、加湿器などで湿度を上げる事が感染症予防になると言われています。これは口や鼻の中の粘膜が乾燥すると、防御機能が弱くなってしまうからです(厚生労働省インフルエンザQAより)。乾燥し過ぎると健康を害すると国からの指導があり(建築物環境衛生管理基準)、相対湿度は40%-70%の範囲とするべきとされています。冬場は、最低でも50%程度の湿度は保ちたいですね。




当社アイ.創建が積極的に採用している無添加住宅オリジナル漆喰が、インフルエンザウイルスを実験室にて不活性化させたことを確認できました。


NPO法人バイオメディカルサイエンス研究会習志野実験室にて、無添加住宅オリジナル漆喰にウィルスを付着させ経過を観察したところ、ウイルスが99.99%以上不活性化しました。


画像は、無添加住宅オリジナル漆喰と、日刊工業新聞の記事です(漆喰で感染力が99%低減。鳥インフルエンザ。とあります)。

2020/5/20追記

また、新型コロナウイルスと遺伝子情報が90%一致するヒト・コロナウイルス(HCoV-229E)をこのオリジナル漆喰に付着させたところ、5分後に完全に死滅(不活性化)しました。プラスチックやステンレスなどの固体に付着した場合3日以上生存するという見解(米国立アレルギー感染症研究所見解)もありますので、漆喰がウイルスに対し有益な性能を持つことが分かりました。

ただし、不活性化の性能はありますが、それが感染を完全に予防するものではない点にはご注意ください。また、今回の試験はテストピースを用いたものです。完全には建物の性能を示すものではない点にもご注意下さい。(追記終)

先ほど書いた通り、漆喰のウイルスへの作用は、PH値に左右されると考えられます。各漆喰製品のPH値は、消石灰以外の混入物にも左右されると考えられますので、商品を選ぶ際にはこの点に着目されることをお奨めします。

3.感染の後に発症しないことが大切。


ウイルスによる感染症は、感染し、潜伏期間を経て発症します。

感染しても発症率が低いウイルスもありますし、エボラウイルスの様に発症率が高いウイルスもあります。2020年1月以降流行している新型コロナウイルスのように、潜伏期間が長いウイルスもあります。

ただし、人間には免疫システムが備わっており、免疫力次第で発症を免れることも事実です。感染の自覚が無いままで毎日を過ごし、結局何事もなかったという人も大勢いるのでしょう。

たとえ感染予防に努力したとしても、例えば家族の誰かがウイルスに感染していれば、ほぼ間違いなくほかの家族にもウイルスは感染していますと言い切るお医者さんもいらっしゃいます(こちら)。

感染予防も大切ですがそれ以上に、発症することをできる限り防ぐ事がもっと大切。日ごろから栄養をバランス良く取り、体力増進、充分な睡眠に心がけることが一番の対策なのでしょう。

もちろん、手洗いうがいの励行は当然ですが、それらに加えて、換気と掃除も大切な生活習慣です。それでは、次のセクションで、空気感染とホコリについて詳しく見ていきましょう。

4.ホコリとウイルス。


くつろぐ時間が長い我が家においても、感染や発症のリスクは抑えたいところです。

家族の誰かが、何かのウイルスに感染すれば、住宅の室内にもウイルスが存在しているのは、ほぼ間違いないでしょう。そして、くしゃみやせきで直接口に入る飛沫感染、せきなどで飛び散ったウイルスが手などを介して体内に入る接触感染を通じて、別の家族に感染する可能性は高くなります。

ですから、例えばインフルエンザを家族の誰かが発症したときは、ウイルスが家中に拡散しないよう、個室に隔離したり、ドアノブなどをアルコール消毒をしたりという措置を取ります。

3つ目の感染経路である空気感染は、空気中に漂うホコリにウイルスが付着して、ウイルスが生存している間に、呼吸を通じて体内に侵入するというものです。ですから、掃除の頻度も、ウイルス感染に関係があるのです。

5.ホコリを増やす原因となる静電気もウイルス感染の元凶のひとつ。


そもそもホコリとは、

布団・衣類などの繊維
人間の皮脂・髪の毛
細かい砂
ペットの毛・フケなど
食べこぼし

などが混ざりあって構成されています。このホコリは細菌、カビ、ウイルスの温床で大変不衛生なもの。さらに冬場は特に、掃除したつもりでもホコリが残りがちなのです。

その理由は静電気


静電気は物同士の摩擦が原因で発生します。摩擦が原因で物が帯電するのですが、その特性を現したのが下の図です。左側の物質ほどプラスに帯電しやすく、右側の物質ほどマイナスに帯電しやすいです。(図の出典はこちら




室内の仕上げで多用されているビニルクロスは、塩化ビニルが主成分、アクリル樹脂で塗装したフロア材も広く普及しています(これらは全て、マイナスに強く帯電する性質です)。 一方、ホコリを構成する人毛、羊毛、木綿などはプラスに帯電しやすい性質があります。

つまり、新建材で仕上げた住まいの壁や天井や床には、静電気の強い引きつけあう力によりホコリが付着しやすいのです。掃除機をかけたつもりが、壁や天井のホコリが残ってしまっている。冷蔵庫やテレビなどの家電に、ぴったりと大量のホコリが付着しているのを見たことがあるかもしれません。これと同じ原理なんです。

一方、ビニルクロスと違って漆喰は、無機化合物である炭酸カルシウムが主成分。だから帯電しにくく冬場の乾燥時でもホコリを付着しません。漆喰の家は、掃除の時にホコリをしっかり取り除けるため、とても清潔に室内を保つことができるのです。



 

漆喰の家がウイルス感染を抑えるという理由の一つが、この静電気にもあると考えられます。ただし、そもそもの空気感染の原因はウイルスの存在とホコリであるため、マメに換気して掃除することが、何よりも大切である事は言うまでもありません。

6.まとめ。

今回は、インフルエンザをはじめとするウイルス感染症への漆喰の作用について考えてみました。感染症予防には、ウイルスの感染経路を想定した予防措置、そして日ごろの健康管理の2点が大切であるのは、言うまでもありません。

漆喰の成分は、エンベロープウイルスを退治できるアルカリ性を示す消石灰。時間とともに弱アルカリの炭酸カルシウムへと変化しますが、殺菌・抗ウイルス作用のあるアルカリ性の壁と天井に囲まれた空間は、実験で示されたとおり、ウイルスの不活性化という性能があることは確か。健康維持のためにとても心強い存在であると言えます。また、静電気の発生をおさえる漆喰が、ホコリの滞留を減らす効果がある事も健康的な暮らしに貢献してくれると言えます。

そして、換気と清掃を励行し、住宅室内の空気環境を清潔に保つことで、感染と発症のいずれもが予防できうることも、ご理解下さいますと幸いです。



健康と住まいに関するその他の記事はこちらからご覧下さい。(シックハウス症候群、冬の寒さと血圧の関係などの記事を掲載しています)

漆喰には様々な優れた機能があります。そのすべてをこちらの記事でまとめています。


(参考記事1)
「新型コロナウイルス 閉鎖空間で短時間浮遊の可能性」(日本経済新聞記事

(参考記事2)
「感染拡大は空気がよどみがちな閉じた環境 新型コロナウイルス」(NHK