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いつかは全額返済しないといけない住宅ローン。
元本に金利が上乗せされた返済総額は、できるだけ少なくしたいですよね。そして不透明な将来のことを考えると、できるだけ早く返しておきたいですよね。そんなご希望を叶えるための具体策を、まとめてみました。
ただし、借りる方の条件次第で結果に違いが生じますので、制度面や金利条件などを、ご依頼される住宅会社や金融機関にお問合せの上ご判断下さい。
1.最初に住宅取得に伴う出費を全て把握しておく。
住宅ローンを借りる前にやっておくべきこと。それは、住宅取得に伴う出費を全て把握しておくことです。本格的に建築計画に着手する段階になって想定外の出費に気がつくと、そこで計画がストップしてしまう懸念があるからです。
住宅取得に伴う全ての出費の内訳は、概ね以下の通りです。
- 建築工事費(本体工事+別途工事)
- 工事関係諸費用(確認申請費用、地鎮祭・上棟式費用、契約書印紙代)
- 登記関係諸費用(表示、保存、抵当権設定)
- ローン関係諸費用(保証料、融資手数料、団信生命保険料、火災保険料)
- 税金(不動産取得税(ほぼゼロ円)、固定資産税、都市計画税)
- 引越し関連(引越し、及び関連費用)
ただし、土地取得を伴わない場合です。特殊なものが他に発生するケースもあるかもしれませんが、大半の方におかれましてはこちらのリストで問題無いでしょう。それぞれの目安ですが、
2. 工事関係諸費用で、約20万円。
3. 登記関係費用で、約30-40万円。
4. ローン関係費用で大きいものは火災保険の50万円前後、それ以外はローンの条件次第で決まります。
5. 税金は自治体や建物次第で変わります。
実際は、ご依頼される住宅会社に詳細をお問合せ下さい。
2.借入時点で判明する利払い総額をできるだけ減らすこと。
さて、出費の総額が判明したら、その調達方法を検討します。
例えば、総予算が4,000万円だとすれば、どうやって4,000万円を調達するかを考えないといけません。その時、自己資金をどれだけ充当すればいいのか、悩ましいところです。
できるだけローンを借りて自己資金を残しておこう。いやいや、ローンが過大であればその分しんどいから、自己資金をできるだけ投入しよう。
両極端な意見ですが、落としどころはその間。様々なメディアで、毎月の返済金額の目安や、自己資金の投入割合などの参考などがありますので詳細はそちらに譲るとして、ここでは利息っていったいどれくらい払うことになるのかを見てみましょう。
金利水準と支払う利息の総額を知っておく
【ケース】
借入総額3,000万円。(元利均等返済)
期間30年。(ボーナス併用無し)
金利固定1.5%。(30年変動無し)
この場合、毎月の返済額はおよそ103,500円となります。これが30年続く訳ですが、その30年で支払う利息の総額は、
7,272,768円
となります。結構な金額ですよね。因みに、金利が3.0%(2008年頃のフラット35の水準に近い)であれば30年で支払う利息の総額は、
15,533,001円
となります。毎月の返済額は、126,500円。同じ3,000万円を借りても、金利水準が1.5ポイント変わるだけで、毎月の返済額が2万円も変わります。このように借入金利の影響は物凄く大きいのです。(※今回は、こちらのシミュレーションを使いました。お奨めです!)
借入金額に伴う、利払いの総額を見てみる。
次に、借入金額ごとの利払いの総額を見てみましょう。条件は上と同じで、
期間30年。(ボーナス併用無し)
金利固定1.5%。(30年変動無し/元利均等返済)
とします。結果は以下の通りです。
借入金額 総利払い金額
4,000万円 969万円
3,500万円 848万円
3,000万円 727万円
2,500万円 606万円
2,000万円 484万円
凡そ、借入金額が500万円変われば、約120万円の差額が生じる計算となりました。
住宅ローン以外の手段を探ってみる。
調達すべき4,000万円。住宅ローン以外では、ご親族に頼る方法が考えられます。親や祖父母からまとまった相続を受ける可能性の高い方は、特にお奨めします。
ここでは、住宅取得に係る贈与税の非課税制度を上手に活用しましょう。親や祖父母からすれば、非課税で子供に資産を相続できるいい機会ですし、家を建てる世代も金利負担を減らせます。
相続税の負担額を実際に計算して、トータルでどれくらい節約できるのかを確認することをお奨めします。
たとえ親族といえどもお金をいただく訳ですから、銀行借り入れを贈与にすることで削減できる金額(つまり、利払いの節約+節税の総和)を、親や祖父母に説明する方も、実際にいらっしゃいます。
因みに、贈与ではなく借りる場合は、必ず借用書をつくり返済条件を明文化し、返済の証拠も残しておきましょう。
金融機関との金利交渉をせよ!
当初決定する金利支払い総額をできるだけ減らす方法の3つ目は、金利交渉です。
たとえ0.1%でも値切ることです!
因みに先ほどの条件、借入3,000万円/30年返済の場合、0.1%の金利差は30年間で、
453,000円
の差額が発生します。30年間12か月の360回の均等払いだと、たった1,258円ですのでこれをどう見るかの話ですが、交渉して損はしません。
3.ローン税額控除を最大限活用して手元現金を増やす。
ここからは、住宅ローン控除を駆使します。
ご存知の通り、住宅ローンを借りると、
年末の借入残高
所得
住宅の質
ごとに、支払った所得税(+住民税)が控除されます。(確定申告を通じて還付されます。)
控除額の計算は複雑な計算式となりますので、詳細は他に譲りますが、目安として年収700万円のご主人であれば、1年で最大36万円程度の控除が可能です。(年末時点のローン残高の1%が上限となります。)
控除が可能な期間は10年。だから300万円ほどの税金が控除されます。さらに、2020年の年末までに入居した場合には13年間適用されます(消費増税に伴う期間限定の特例です)。
毎年30万円前後の税金の還付。手元に入った現金をどうするか?最もお奨めしたいのは、
10年後(場合によっては13年後)の控除が終了する時点まで全て貯金して、その時にローンの元本を一気に減らす。
ということです。つまり繰り上げ返済ですね。
繰り上げ返済の効果を計算してみる。
具体的にシミュレーションをしてみましょう。
【ケース】
借入総額3,000万円。(元利均等返済)
期間30年。(ボーナス併用無し)
金利固定1.5%(30年変動無し)
(A) 期間中繰り上げ返済はしない場合の利払い総額。
7,272,768円
(B) 11年目に300万円を繰り上げ返済した時の利払い総額。
6,317,351円
という結果となりました。約95万円の節約です。
しかも、(B)では繰り上げ返済後の毎月の返済額を変えていないので、結果的に26年と10か月でローン返済が終了する結果となりました。(つまり3年2か月前倒しで終了しました。これは大きいですね! ※今回も、こちらのシミュレーションを使いました)
当然ながら、繰り上げ返済のためのまとまった原資があれば、どんどん元本を減らせばいいですし、それが早ければ早い程効果が出ます。10年間貯金する前に繰り上げ返済してもいい訳です。(当然、必要な手元資金と相談しながらですが。)
それではどうすれば最も得をするのかの目安ですが、
・ 借入金利が1%以下であれば、税額控除が終了する11年目以降に繰り上げ返済する。
・ 同、1%以上であれば、積極的に毎年繰り上げ返済をする。
というのがいいみたいです。こちらのサイトが分かりやすいのでご参考下さい。税額控除分を繰り上げ返済に充てるという方法はもはや常識になりつつあるようです。
夫婦共働きならばこうすればもっと得する。
とてもインパクトのある税額控除ですが、もしも夫婦共働きであれば、それぞれで税額控除を受けて還付される税金を最大化するという方法もあります。
この場合は、それぞれの借入額で控除額が決まるので、合わせて最大となる配分を決める必要があります。条件によって変わってきますのでご注意下さい。
還付された税金を10年貯蓄しておくことのメリット。
先ほどは、還付された税金を全て元本返済に充てる方法をお伝えしましたが、何よりも10年コツコツ貯めておくことのメリットは、その時に選べる選択肢が豊富である事だと思います。
子供に必要なお金を考えて、半分だけ元本返済に充てようか?とか、返済にはゆとりもあるし、一部は運用して増やそうか?とか、いろいろと候補が上がるでしょう。本格的に資金運用を検討する方でしたら、単純計算で、ローン金利よりも高い利回りで運用できれば、逆に返済はできるだけ延ばした方が得です。
ただ、10年後の状態を予測することは難しいですが、その時に備えがあればあるほど安心できますよね。それが最大のメリットだと思います。
4.控除金額は、借入残高、所得、住宅の質の3つから決まる。
これまでで試算した条件が、ご自身ではどうなるかを試算されたい方にお奨めのシミュレーションサイトがいくつかあります。例えば、こちらも分かりやすく、すぐに目安の金額が判明します。
また「認定住宅」と見なされる良質の住宅の場合は、控除額の上限が上がるため、借入の額が大きい方はご検討に値すると思います。
5.まとめ。
自動的に、毎月口座から引き落とされる住宅ローンの返済。日ごろ意識することはありません。最初の契約のままで放置するのではなく、計画的に返済すると大変お得になります。